ぼくの田舎の話。町内での「要介護者」リスト化→共有は許されるか
【隔週木曜日更新】連載「母への詫び状」第三十七回
■町内会の役員をやって驚いたこと
認知症もしくは要介護の人たち全般をサポートする上で難しいのは、近年の個人情報保護の風潮がいろんな面でさまたげになっていることである。
実家で両親の世話を始めて3年ほど経った頃、町内会の役員をやってくれないかという話がぼくのところへきた。
「自宅で親の介護に追われ、ろくに近所付き合いもしていない不自由な人間になぜ?」と驚き、断ろうとしたが、
「この役員は持ち回りで、順番にやる決まりになっている。あなたは大変そうだから今まで頼まなかったけど、そろそろやってもらわないと困る。たいした仕事はないから大丈夫」と強く説得され、しぶしぶ引き受けた。町内に“高齢ではない成年の男”が少ないという田舎の事情もあり、断りきれなかった。
すると、まずは町内の人たちの資料を手渡された。それぞれの家の家族構成や勤務先、ひとりひとりの生年月日も入っていた。
「これはね、今、個人情報保護法があって本当は良くないんだけど、担当者に渡すことになっている資料だから。それから、ここの家と、ここの家には要介護のお年寄りがいます。これも把握しておいてください」
え? 個人情報保護法に則れば本当は良くないけど、把握しておいてください……か。
長年続いてきた、しきたりみたいなものなんだろう。確かに町内会というのは、この種の情報を共有するためにあるような仕組みかもしれないし、どこの家庭に要介護のお年寄りがいるかくらいは、防災担当の役員ともなれば知っておくべき情報なのかもしれない。